お疲れ様です、公務員大学 総長のはやたです。
最近、こんなニュースが世間を騒がせました。
「働き方改革」の陣頭指揮を執る厚生労働省の役人たちが、厚生労働省はパワハラやセクハラが蔓延しているとして、厚生労働大臣に提言を申し入れたのです。
この提言提出までの背景はわかりかねますが、約半数の職員がパワハラかセクハラを受けたことがあると回答しているとのこと。また、パワハラかセクハラを受けたことのある職員も、人事上のマイナスを考慮して相談ができない、しづらいと回答しているようです。
公務員を長らくやっていると、「厚労省、しかも本省ならばそうなのだろうな。」と感覚的には思ってしまうところが正直なところです。
今回の記事では、地方公務員として8年間働いた実体験をもとに、公務員の世界でのパワハラの実態について触れたいと思います。
※本記事記載の内容は、自治体のイチ職員の主観的考察です。すべての公務員に該当するわけではありませんので、その点ご承知おきください。
公務員にも、パワハラはある
マイルドな職場風景のイメージがある公務員ですが、程度の差こそあれパワハラはあります。
実際、私も経験しましたし、目の当たりにしたこともあります。
もちろん、理由があってのことなのですが、やはり当事者としてはとてもつらい経験でした。
私の事例と、同期の友人の2つの事例について、ご紹介したいと思います。
筆者の事例
当時、私は地方公務員として3年目で、初の人事異動を経験し、本庁勤務となった時でした。
役所というところは概ね若手の人事の流れは決まっていて、その中でも新規採用の職員は「新規採用枠」というものがあります。
新規採用職員は、任せられる仕事が極めて少ないため、仕事量が少なく、また影響の小さい部署からスタートすることが基本なのです。そこで多少の経験を積み、2か所目、3か所目と回って一人前の行政マンとなっていくのです。
田舎の勤務先から私が配属された部署は、「不夜城」とも呼ばれる障害福祉部局。その仕事のスピード、量に圧倒され、全くついていくことができませんでした。
例えば役所では毎年恒例の予算獲得業務。私はいきなり、新規制度の設立を任されました。しかし本庁に来たばかりの職員が、そんな高度なことできるわけがありません。そもそも予算のイロハから入るべきレベルです。
過去の書類を見たり、先輩方に聞いたり奮闘しましたが、最初の1年間はダメダメで毎日のように怒鳴り声で叱責され、時には書類を投げ捨てられることもありました。朝から仕事のことを考えると憂鬱で、吐きそうなこともありました。(根性で吐きませんでしたが。)
翌年度こそ、仕事のノウハウを覚えたので誰から怒られることもなく、次の異動先でも余裕で仕事をこなすことができるようになったため、一人前にしてくれたという点では感謝しています。
しかし、いくら仕事の出来が悪かったとはいえ、「大勢の前で大声で」叱責し、書類を投げるといった行為はパワハラです。私自身は自分のミスが原因だから仕方ないと考えていましたが、仮に人事へと相談していたらレッドカード案件だったことは間違いなかったと思います。
同期の事例
私の同期は、とても優秀で、私と同じく3年目の頃に本庁の経理部門へ配属されました。
しかしそこで待ち構えていたのは、「狂犬」と呼ばれる財政課出身の係長。(ちなみに私が怒られていた方も財政課出身でした。)
とにかく気になる仕事が出てくると徹底的に追及するタイプで、一度噛みつかれたら最期、納得のいくまで説明・資料作成を求められ、修正依頼があった10分後にまた電話がかかってくる始末でした。
そんな彼の下についた同期は、狂犬係長から毎日のように怒鳴られていました。本当に、大したことのないことでも、「何やってんだ!?」納得がいかない説明なら「何言ってんだテメェ?」と、言葉の圧力がすごかったそうです。(私もその現場を何度か目の当たりにしました。)
上司と部下の関係であっても、威圧的な言葉・態度で部下を委縮させるようなことをすればパワハラです。彼も私と同じくゴリゴリ体育会系で、指導を受け切り吸収しようという姿勢でしたので、最後まで人事や上長へ相談を持ち掛けることはありませんでした。
しかしながら、本来は部下の面倒を見る立場の人間が、部下へ毎日のように怒鳴り散らす行為は、指導の域を超えており、認められないパワハラであったと思います。
「指導」の範疇を超えればパワハラ
高校野球でもよく話題になりますが、「指導」という名目で、体罰が蔓延しているのが現在の日本の部活動の実態としてあります。実際私も、高校時代には体罰を受けたこともあります。
ですが体罰はどのような理由があれ、本来は許されるものではありません。
職務遂行上における、「怒鳴り散らす」行為も同様です。
誰でもミスはするものですが、社会人ですから、ミスをしたら叱責されるのは致し方ないでしょう。
しかしそれを「大勢の前で」「大きな声で(怒鳴り声で)」「強い口調で」行うことは、どう考えても指導の範疇を超えていると思います。
パワハラの定義は、「職務上の地位や権限又は職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、人格と尊厳を侵害する言動を行い、精神的・身体的苦痛を与え、あるいは職場環境を悪化させること」です。
大きな声で威圧的な口調で叱責することは、部下の人格や尊厳を明らかに侵害するものではないでしょうか。いくら自分が指導だと思っていても、社会通念上パワハラであることは明らかです。
自分に責があるからと耐え忍ぶ場合であっても、パワハラ行為であるということはきちんと認識すべきでしょう。
パワハラ被害にあったらすること
パワハラは、パワハラをしている方が悪いに決まっています。
しかし、じっと我慢しているだけでは何の解決にもなりません。
公務員ですので、時が来れば自分か上司のいずれかが異動を迎えますが、それまでじっと耐え忍ぶことは、精神衛生上よくありません。
パワハラ問題を解決するには、自分の力だけでは無理です。周囲に助けてもらうことが必要です。
①上司へ相談
パワハラをしている職位よりも上席の職員へ相談しましょう。
パワハラをしているのが係長であれば課長に、課長であれば部長級にといった具合に、より上位職のものへまず相談しましょう。
背景によると思いますが、業務量が多いのならば事務分掌を変えることや、部署内での配置転換といった対応の可能性があります。
管理職はパワハラが自分の部署で起きていると人事課へと報告されたくないという心理があるので、何かしらの対応が期待できるはずです。
②人事課へ直談判
管理職が何も対応してくれない場合は、直接人事部門へと働きかけるしかありません。
公務員の場合、名称は組織により異なれど、人事部局にセクハラやパワハラの相談・通報窓口が設置されているはずです。そこへ相談を直接持ち掛けます。
自分が人事へと告発したことは、必然的に直属の管理職にはわかってしまいますが、人事課の目があるので下手に騒ぎ立てられることなく、改善措置を期待することができます。
休職するのも一つの手段
出先機関にいた頃、直属の上司が言ってくれた言葉です。きちんと休暇を取って、毎日気持ちよく仕事をしなさいという話の中で出た発言なのですが、パワハラやセクハラを受けて精神が参ってしまった人も、同じことが言えると思います。
私は精神を病んだことはありませんが、嫌な人間がいて、ストレスを感じて、体調を崩してしまいかねない環境ならば、逃げてしまってよいと思うのです。
自分一人がいなくなっても、世界は滅亡しません。社会は回ります。
人がいなくなったら、その分誰かが頑張る必要はあるのですが、それが組織ですから、責任を感じる必要はありません。
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