お疲れ様です、軟派公務員です。
2017年12月、テレビでは毎日横綱日馬富士の暴行事件が報道されておりました。相撲で不祥事が起きると『「相撲協会」の理事長が~』、『「相撲協会」の役員が~』と、報道されているため、耳にしたことのある方も多いのではないかと思います。
(ぶっちゃけ、相撲協会って何よ?何をしているのよ?てかこいつらの給料はどこからきているのよ?)
と皆様、気になったことはないでしょうか?
先にネタバレすると、相撲協会の職員さんたちは団体職員に該当します。お給料は相撲協会からもらっています。
アンケートなどで職業をチェックする際、「団体職員」という項目を見たことがある方は多いかと思います。そのため、「団体職員」という職種があるという認識は皆さんあるかと思いますが、その定義を明確に回答できる人は少ないのではないでしょうか。
私は、本庁に勤めていた頃、県出資比率が最大の公益財団法人を担当しており、団体職員と直接関わる仕事をしておりました。私が彼らの業務・資金の使用用途を決めていたので、団体職員の業務の性質・待遇等については、よく理解しています。
本日は、あまり実態が知られていない「団体職員」について、ご紹介したいと思います。
団体職員の「団体」の意味
ザックリと言うと、「非営利」団体の「団体」という意味です。
「非営利」というところが肝で、○○会社というものは団体職員ではありません(「非営利」の定義を話すと長くなりますので割愛しますが、簡単にいうと営利(=金儲け)を目的としていない団体のことです)
身近な団体職員の例を挙げると、
- (公財)日本相撲協会
- (公社)日本医師会
- 農業共同組合(JA)
- 国立大学法人
- 生活協同組合
- etc
などがあります。
イメージがしやすいものをピックアップしました。公務員と同じく一括りにできませんが、団体職員は公務員と同じように公共性の高い職業、ということがイメージできるかと思います。
少し紛らわしいもので官民共同出資の団体を「第三セクター」と呼びます(通称:三セク)が、三セクの中には営利を目的としたものも多いので、第三セクター職員=団体職員ではありません。たまに三セク=団体職員と説明している記事を見かけますが、正確には誤りですのでご注意を。
団体職員ではない第三セクターの事例としては、
- 東葉高速鉄道
- 千葉都市モノレール
といった鉄道系の団体があります。
団体職員の待遇
職業を選ぶ際、やりがいや将来性も重要な要素ですが、最も重要な要素は、待遇かと思います。この肝心の待遇について、「残された唯一の楽園」と聞くことがありますが、そんなことはありません。私は決してオススメしません。
もちろん、公務員と同じく一括りにはできないのですが、総じて一般的な会社員・公務員よりも少し低めな待遇となっています。具体的に見ていきましょう。(なお、星は五段階評価です。)
給料★★
給料はハッキリ言って、高くはありません。
全世代の平均年収は、379万円となっています。(出典:転職会議)
私が担当していた団体の感覚からも、当たらずとも遠からずな金額だと感じています。ヒラ職員なら初年度にギリギリ300万いくかどうかといったところではないでしょうか。出資元の団体より安めに設定されることが多いです。
ちなみに、団体職員は残業代があまり見込めません。なぜなら、「非営利団体」であるため、自己資金(会費収入など)が総じて乏しく、税金が主な収入源であるためです。
なぜ、税金で運営が厳しいかというと、税金は使用用途がガチガチに固められているため、自由に使うことができないのです。
例えば補助金100万のうち、人件費は30万円と決められていたら、残り70万が余ったからといって人件費に充てることはできません。(正確には用途の変更は、補助先と協議することとなりますが、昨今の状況ではまず認められません。)
特に人件費については出資元の国・地方公共団体ですら相当厳しく査定されています。外郭団体は当局以上に財政部局に厳しい目で見られているので、規模の小さい団体では職員を非常勤職員として採用せざるを得ず、定期昇給すらないといったことも珍しくありません。
休暇★★
休暇についても、取り放題といったことはありません。特に何かイベントごとが多い団体の場合(スポーツ振興など)は、大会等が土日に集中するため、週末の方がかえって忙しいなんてこともあります。
ブラック色の強い団体だと、イベントで土日出勤しても金がないから残業代が出ない。止むを得ず代休を取得するしかないものの、半休しか取れないといったこともあり得ます。
ごく稀に存在しているオアシス系の団体では、有給フル消化が当たり前な場合もあるそうですが、総じて取りやすいと言うことはできません。
安定性★★★★★
団体職員のメリットとしては、公務員と同じ程度の安定性が見込めるという点です。基本給は低いですがボーナスも出ますし、国または地方公共団体という後ろ盾があるため、倒産するリスクが極めて低いです。
また、一部の大きな団体を除いて、勤務地が変わるほどの人事異動もありません。そのため、市役所と同等の安定性を持っていると言うことができます。
しかし人件費削減のため、常勤ではなく、非常勤としての採用もかなり増えているため、雇用形態が非常勤さんの場合は、少しリスクも大きくなります。
規模の壁
団体職員の待遇については、団体の規模によってピンきりです。JAの職員と、○○市△△協会のような数人しかいないような団体の職員では、その待遇は天と地ほども差があります。
規模の小さい団体は職員個人の代替性がないため、休みづらい、自己資本もないので残業代も出ない、といった職場環境である可能性があります。冒頭で列挙した大規模団体はメジャーどころであり、会費収入、寄付金といった自己資本が期待できます。(自己資本は、自由に使える)
しかし規模の小さい団体だと、そうはいきません。
名前も聞いたことのないような団体に、あなたは年額5,000円の寄付(年会費)をしますか?
法人であっても同じです。誰も知らない慈善活動に寄付金を出すほど、気前のいい企業はありません。大規模の団体は一般の公務員・会社員となんら変わらない待遇です。しかし零細的な団体の待遇は、ブラック企業に近い企業風土であるリスクがあります。
このあたりは、民間とあまり変わらないかもしれません。(規模の小さい企業・団体がすべてそうだという意味ではありません)あなたが就職を目指す団体があるのならば、収入に占める自己資本の割合や、団体の規模感をきちんと確認しておくことをお勧めします。
団体職員の例
これは、私が以前勤めていた所属で担当していた団体の一例です。
【団体の規模】
職員数:5人
常勤:1名
非常勤:4名
収入に占める会費収入の割合:3%
【常勤職員の場合】
性別:女性
年齢:40代前半
勤続年数:7年目
月給:30万円(残業代込み)
ボーナス:2.5ヶ月/年
残業時間:100時間/月
有給取得:ほぼなし
【非常勤職員の場合】
性別:男性
年齢:20代後半
勤続年数:3年目
月給:25万円(残業代込み)
ボーナス:1.5ヶ月/年
残業時間:60時間/月
有給取得:数日程度
なお、この団体は土日にイベントが開催されるため、1か月の半分くらいは土日のどちらかは出勤しておりました。特にこの団体はほぼ100%が自治体からの補助金で運営しているケースで、立場としては非常に弱いところでした。
これはほんの一例であり、すべての団体が上記のようなものだとは言いません。ただ、団体職員=楽だというイメージは、少なからずあるかと思いますが、それは明確な誤りであり、天国のようなホワイト企業をイメージしていくと痛い目をみますので、覚えておいてください。
まとめ
- 団体職員とは、非営利団体で働く人のこと。
- 給料は高くはないが、公務員並みの安定感がある。
- 規模感による待遇の差が大きく、小さいところではブラック企業と同じ職場環境であるリスクがある。