お疲れ様です、公務員大学 総長のはやたです。
今回のテーマは、「地方公務員が出世をしたがらない理由」です。
苦労してやっと入った地元の役所。
政策の決定を自分たちの責任で行うわけですから、さぞギラギラした人たちと競争をしていく・・・ことはありません。
地方公務員の間では、仕事ができる人ほど出世したがらない傾向にあります。
私の先輩でものすごく仕事ができる人(とにかく早い)何人かいたのですが、上昇志向ゼロでした。
↑の「出先の主幹くらいがちょうどいい」という発言は、その先輩の発言そのままです。
今回の記事では、なぜ地方公務員は出世欲がないのか、その理由を説明していきたいと思います。
地方公務員の出世は負け組である理由
負け組というと言いすぎかもしれませんが、少なくとも羨望の眼差しでみられることはありません。
なぜなら、出世しても得られるメリットがほとんどないからです。見返りが大きければ、「大変でもやってやろう」という人はいると思うのですが、見合ったリターンはありません。
具体的に、説明したいと思います。
私の自治体では、人事異動による昇格のほか、課長職への公募というシステムがあります。幹部のポストに自ら応募し、試験を受けて通ればポストに就くことができるわけですね。
①金銭的メリットがない
一番大きいのは、なんといっても金銭的なメリットがほどんどないということです。
課長級からはいわゆる管理職となるため、時間外手当が支給されなくなる代わりに「管理職手当」が支給されます。
本庁部長:128,600円
出先部長:115,000円
本庁課長: 92,600円
出先課長: 80,000円
だいたい10万前後の加算ですね。この他にも、ボーナスの時に加算される「役職加算」というものもありますが、まぁ微々たるものです。
管理職になって、もらえる手当は10万前後。
課長の前だと課長代理、主幹といった役職になりますが、この人たちは自治体によって差はあれど時間外の単価が3,000円くらいの人たちです。
月30時間程度残業すれば、元が取れるわけですよね。
課長になるような人たちは総じて優秀な人たちが多いため、残業が多い部署を回っているわけです。それらの部署では30時間なんて閑散期ですから、どう考えてもヒラ時代の方が稼いでいるわけですよね。
先輩が財政課にいた時代、財政課長からこんなことを言われたそう。
≫≫関連記事:公務員の管理職手当はどのくらい?【給料減・責任増です】
②責任が重い
課長以上になると、途端に責任が重くなります。
本庁では「議会対応」を行う必要が出てきますし、公文書の発出は概ね課長名で発出します。
政治家との折衝を行う必要があり、自分の答弁が県・市の意向として半永久的に記録され、自分の名前で事業者等へ通知文を発出するわけです。
つい先日までは、課長の下で答弁を作っていた人間が、内示が出た数週間後には答弁をする側に回らなければいけなくなります。
責任が何倍にも大きくなる上、給料が大して変わらないことが、地方公務員が出世を敬遠する二大巨頭といっても過言ではないでしょう。
③職位に比例して多忙になる
議会で質問がヒットした場合などに忙しくなることは当然として、課長職以上になると途端に増えるものがあります。
それは、「休日出勤」です。
これは正直、部署間の差が大きいのですが、観光やスポーツ振興系の課長になったらさあ大変です。
イベントの視察や「〇〇式」「△△振興会/研修会」のような行事に毎週のように出席せねばならず、しかも前述のとおり時間外手当は支給されません。
私が本庁時代にいた福祉系の部署では、私が担当していた事業だけでも7日~8日程度の休日出勤をお願いしていました。「私だけでも」です。事業はたくさんあるので、他の課員からも依頼がたくさんあったはずです。
代休は取れますが、毎回取っているわけにもいかず、体力的にきついと思います。
数少ないがメリットもある
地方公務員の出世に関してネガティブキャンペーンを展開していますが、数少ないメリットもあることはあります。
これをメリットと取るかは、あなた次第ですが・・・!
①休暇が取りやすくなる
課長は課のトップですから、課のスケジュール引っ張られることはありません。休みは取りやすい環境となります。
「1週間不在」であることを強調しておけば、あとは課員がそれに合わせて業務スケジュールを組み立てるだけです。
実際、お盆や年末年始・GWなどの時期は幹部は長期間の休みを取ることが多いです。
まじめな公務員ですから、上の人が率先して休暇を取っている姿を見ると、部下が自分も取っていいんだという気持ちにもなりやすいですしね。
②世間体がよくなる
県や市の課長以上となれば、「お偉いさん」となり、地元でそれなりに有名になるでしょう。
あの人は社会的地位が高い人なのだと、世間体がよくはなると思います。
出世しない方法
①昇任試験を受けない
課長以上の幹部になる場合は、昇任試験を受ける必要がある場合があります。
その場合は、試験を受けなければ永遠にヒラのままです。
東京都などは、管理職どころか「主事→主任」を含めた全職位の承認に試験がありますよね。
ただ、実際のところ管理職への昇格が「美味しくない」ことは周知の事実ですので、昇任試験の制度を積極採用している自治体は少数であり、人事異動での昇格が中心の自治体がほとんどだと思います。
私が所属する自治体では、人事異動での昇格に加え、管理職のポストに応募できる公募制度がありますが、ほとんど申込者がいません。(ゼロとか1人、2人程度でした。)
ちなみに、今は仕事柄都庁の人と仕事をすることが多いのですが、年齢が高く、仕事の能力も明らかに高いのにヒラの役職の人が結構います。皆さん、うまくやっているんですね・・・。
②必要以上に頑張らない
地方公務員の出世の判断材料の一つに、「残業時間」があります。
忙しい部署に放り込まれ、厳しい労働環境の中めげずに職務を全うすることで、高い評価を得ることになります。
実際、私も本庁時代に年700時間を超える過酷な環境を耐え抜き、仕事の能力も相当に向上したので、出向をさせてもらっています。
本庁でも指折りの多忙な部署でしたので、慢性的な人手不足の部署でした。そこで与えられた業務をこなす以上に、係内の様々な業務をサポートしていたことで、残業時間が膨らんでしまいました。
とか言っちゃってましたからね。
今では絶対にそんなことしないで帰ります(笑)。
逆に、同じ課にいた同期で仕事ができない子がいたのですが、業務はほぼ取り上げられ、定時になると
と確認され、なければ即時帰宅を促されていました。
そんな彼は次の異動で見事にへき地の閑散部署へと飛ばされ、誰が見ても明らかな人事でした。
正直、逆にうらやましかったですけどね・・・。
まとめ
記事のポイントをまとめます。
- 地方公務員は出世をしても「給与が大して増えない」「責任は倍増」「土日出勤が増える」ため、出世したがらない人が多い。
- 管理職になると、休みは取りやすくなるが、メリットはそのくらい。
- どうしても出世したくなければ、仕事を頑張らずに「仕事ができない人」のレッテルを貼ってもらうことで出世とは無縁の公務員生活を送れる。
上に