こんにちは!公務員大学 総長のはやたです。
現役の公務員の方も、公務員を志す受験生の方も、「ワークライフバランス」という言葉は聞いたことがあると思います。「仕事と生活の調和」という意味ですね。
ワークライフバランスを大きく左右するのが、残業の有無だと思います。
現役公務員は引継ぎの時、ついつい「残業は結構多いですか?」と聞いちゃいますよね。残業の有無は人生で重要なファクターなのです。
今回の記事では、現役の地方公務員(県庁職員)としての経験を元に、「地方公務員の残業はどのくらい多いのか、残業代はきちんと出るのか」といった残業事情をお話ししたいと思います
地方公務員の残業事情
実は地方公務員の残業については、総務省からデータが公表されています。
公表されているデータ
【地方公務員の時間外勤務の時間数】
<全体>
- 都道府県:約150時間/年(12.5時間/月)
- 政令指定都市:約174時間/年(14.5時間/月)
- 県庁所在地:約160時間/年(13.3時間/月)
⇒全体平均:約158.4時間/年(13.1時間/月)
<本庁>
- 都道府県:約223時間/年(18.5時間/月)
- 政令指定都市:約234時間/年(19.5時間/月)
- 県庁所在地:約198時間/年(16.5時間/月)
⇒本庁平均:約219時間/年(18.3時間/月)
<出先>
- 都道府県:約106時間/年(8.9時間/月)
- 政令指定都市:約144時間/年(12時間/月)
- 県庁所在地:約118時間/年(9.8時間/月)
⇒出先平均:119時間/年(9.9時間/月)
ご安心を、ちゃんとカラクリかあります(笑)。
上記データについては、「実績ベース」なので、「申請していない残業(いわゆるサービス残業)」は含まれておりません。
あくまでも、各自治体が把握している残業時間の最小値だととらえておくべきです。
なぜ、サービス残業が発生しているのかについては、後段で説明します。
残業をしても申請しない公務員は結構います。
理由を聞くと「自分の仕事が遅いから」「ミスをしたから」など、謎の理由が多い。
しかし、残業の申請をしないと人事は気がつけないので、人員配置が適正化されません。
必ず働いた分は残業の申請をするようにしましょう。
筆者の実体験(都道府県職員)
【筆者の時間外労働実績】
- 1年目 出先 税務部門 0時間
- 2年目 出先 税務部門 0時間
- 3年目 本庁 福祉部門 750時間
- 4年目 本庁 福祉部門 600時間
- 5年目 出先 医療部門 500時間
- 6年目 出先 医療部門 350時間
- 7年目 出向 イベント部門 500時間
筆者の場合は、本庁の中でも激務オブ激務と呼ばれる障害福祉部局へと配属されたため、最初は過労死するのではないかというほどに働いていました。
総務省の公表データでは、都道府県の本庁平均が223時間ですから、3倍以上ですね。
出先は2つ経験しましたが、本当に絵にかいたような公務員ライフを送れる部署と、そうでない部署で差が激しかったです。やはり医療・福祉系の部門は出先でも忙しい傾向にあります。
地方公務員は残業代が満額出る?
激務部署に配属されたなら、せめて働いた分の見返りは欲しいですよね。
公務員は残業代でしか給与の差がつかない業種ですから、激務部署の人と、閑散部署の人が同じ給料なのはおかしな話です。
しかしながら、地方公務員は残業代が100%支払われるというわけではありません。
その理由を見ていきましょう。
残業代の予算は部署による
公務員の残業代は、部署ごとに予算で上限が決まっています。
そしてこの残業代の予算は、前年度の時間外労働の実績値をベースに決まります。
福祉系の部署などは激務部署なので実績値が多く、潤沢な残業代の予算がある傾向にあります。(文房具代すらケチるくせに、不思議なものです。)
ここで困るのが、もともとは普通の繁忙レベルの部署で、突然人が来なくなったとか、急に新しい業務が発生した場合。
時間外の予算増は、余程のことがないと通らないし、そもそも財政や人事との折衝を嫌がって幹部もなかなか動いてくれないのです。
怖い負のスパイラル
きちんと残業を申請しないと、残業代が出ないどころか、人が減る可能性があります。
コラムで説明したように、人事部署は時間外の量で仕事量を測っているので、残業を申請しないと閑散部署と見なされてしまうからです。
人事から見ると時間外労働は少ないので、追加の予算や人員配置の検討の土台にすら上がっていない、そんなこともあり得るのです。
実際、私の先輩で、2か月連続で100時間近く残業をしたのに、申請がほぼ認められなかったという人がいました。
「認められなかったって何?」と思いましたが、そのような部署も存在することは事実のようです。
筆者の実体験
筆者の場合は、幸いなことに、7年間の公務員生活の間では100%残業代を支給してもらっています。一円もタダ働きをしたことはありません!
本庁時代は激務系の部署だったのですが、労務管理を行うために、きちんと残業を申請しろと、口酸っぱく課長・係長から言われていました。
これには激務部署ならではの実情もあります。
人事課というところは、どこが忙しくて、どこが暇な部署か、時間外の申請時間を元に判断しています。当然、残業が多いところには人を配置、少ないところは削減の対象となってしまうのです。
ただでさえ激務である福祉部署で、人を減らされたらたまったものではありません。同僚が時間外を数か月申請しておらず、夏季休暇中も出勤していたことが分かり、係長から大目玉を食らっていました。
私は幸いなことに残業代は全額支給してもらっています。
しかし、全体としては、残業代は基本的にもらえるものの、運悪く貧乏部署に当たるともらえないこともあることが現実だと思います。
地方公務員の忙しい部署
地方公務員(県庁・市役所)で残業が多い部署トップ3を発表します。
1位:財政課
地方公務員の方なら、異論はないと思います。
財政課は自治体の予算を掌握している部署で、役所の中でもエリートが集まります。
仕事の内容は予算要求・ヒアリングが有名ですが、地方交付税の算定など、歳出だけでなく歳入の仕事も行っており、自治体のお財布を握っている部署です。
財政課の出身の先輩は「20時に帰れると閑散期」だと言っておりました。
他にも、「財政課に行けば家が立つ(残業代がたくさん出るから)」という格言もあります。
出世の登竜門とも言われる部署ですが、仕事の過酷さ故に体調を崩す人も少なくない部署です。
2位:人事課
2位は人事課です。
こちらも異論はない部署ですね。財政課と肩を並べる激務&出世部署です。
財政課よりはややマシですが、人事課は季節労働者の色があり、1月~3月のピーク時の残業は財政課を凌駕すると言われています。
仕事内容は人事異動以外にも人材育成、組織の監察などがあります。
3位:企画課
受験生には少し聞き慣れない部署かもしれませんが、企画課も激務部署です。
(2021年現在、企画課という名称は減り、「知事(市長)戦略課」「総合戦略課」という名称が増えています。)
仕事の内容は、首長直轄の政策を担当すること、全庁的な政策の調整役など、多岐に渡ります。
「どの部署にも担当が当てはまらない」という仕事は企画課が請け負うこともあります。
人事や財政は頭脳エリートが多い印象ですが、企画課は実務の精鋭が集まる部署のイメージですね。
さらに詳しく激務部署をランキング形式でまとめたものとして「地方公務員(県庁)の激務部署ランキング一覧」も書いていますので、よければこちらもどうぞ。
働き方改革の影響は?
労働基準法の改正
2019年4月1日に改正された労働基準法が施行されました。
- 時間外労働(休日労働は含まず)の上限は、原則として、月45時間・年360時間
- 特別の事情があって労使が合意する場合は年720時間以内(月100時間未満、2~6か月平均80時間以内)
- 原則である月45時間を超えることができるのは、年6か月まで。
我々地方公務員は一部を除き労働基準法の適用を受けますので、この通りに対応していくことが求められます。
上限管理が厳しくなった
法令では医師等を除き、改正労働基準法への違反は違法であり、罰則規定までありますから、官公署も必死で法令を守ろうとします。
私は現在民間へ出向中ですが、派遣元も勤務時間の上限時間の管理がかなり厳しくなったと聞いています。
この取り組み自体は、いいことなのだと思いますが、公務員の残業は「プロジェクトが舞い込んだから忙しい」というよりは「慢性的な人手不足」が原因ですので、うまく機能するのか疑問は持っています。
まとめ
記事のポイントをまとめます。
- 地方公務員の残業時間の平均は、本庁219時間/年、出先119時間/年。
- 実際は、サービス残業が隠れているのでもっと多い。
- 残業代は基本支給されるが、全く支払われないブラックな配属先もある。
- 働き方改革により、上限管理はとても厳しくなってきている。
「公務員はブラックだ」という声が強まっていますが、全てがブラックだというわけではありません。
どうしてもネガティブな声というのは注目されがちですからね。
私の実体験として、地方公務員(県庁職員)という仕事は楽ではありませんでしたが、ブラックだと感じたことはあまりありませんでした。
本記事が「地方公務員の残業」に関する疑問を解決できたら嬉しいです!
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