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お疲れ様です、軟派公務員です。

 

突然ですが、「障害者」「障害者福祉」と聞いて、どのような印象、考えをお持ちですか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おそらく、ネガティブな結果ではないでしょうか。

 

先日、いつものように仕事を終え家に向かう電車の中で、このような記事を見ました。

 

toyokeizai.net

 

私が気になったことは、この記事の内容ではありません。

 

その下にある、無数の心無いコメントに、恐怖と憤りを感じました。(ブログを書く前に再度確認したら、配慮のあるコメントが増えて少し安堵しました)

 

私は、某都道府県庁の行政職の職員です。

 

現在7年目ですが、そのキャリアの中で、障害者福祉に携わったことがあります。

 

配属が決まった時は、障害者福祉に対して、確かにネガティブな印象でした。だって、どこの自治体でも障害者福祉部局といったら不夜城ですからね。当然、仕事は多忙を極め、忙しい時は残業が100時間/月を超えることもありました。

 

しかし、その2年間で障害者福祉に対する考えは180度変わりました。

 

特にこの障害者差別解消法は、一部ですが法令の制定にも携わったことがあり、大変印象に残っている法令です。

 

障害者差別解消法は、決して変な法律ではありません。

 

障害のある方も、助けられて当然などと思っていません。

 

本日は、「障害者差別解消法」について、取り上げたいと思います。

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障害者差別解消法制定の経緯

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1 障害者権利条約への署名(2007年)

障害者差別解消法の制定にあたり、先駆けとなったものが「障害者権利条約」です。

 

この条約は、障害者の人権について言及している条約で、障害に基づくあらゆる差別を禁止するとしています。

 

「私たちのことを、私たち抜きで決めないで」(Nothing us about Without us)というスローガンで作られたこの条約に日本は2007年(平成19年)に署名しました。

 

ここでのポイントは、条約の署名で留めたという点です。通常、条約には署名(=賛成の意を表明する)と批准(国内で効力を発揮する)があります。

 

日本は、当時国内の法律が未整備であるため、すぐに批准しても条約を守れないことになることから、署名に留め、批准のための法整備を行うことにしたのです。

 

これが、障害者差別解消法制定のスタート地点です。

(参考URL:外務省HP)

https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000069541.pdf

2 障害者基本法の改正(2011年)

障害者基本法は、障害者を取り巻く法律の中で最も基本的な考え方を示した理念法になります。ある意味、障害者に関する法令の中で憲法的な位置付けの法律です。

 

しかし、改正前の障害者基本法では障害者差別解消について十分な規定がされておりませんでした。

 

【改正前の障害者基本法】

何人も、障害者に対して、障害を理由として、差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない。

 

 

うん、当たり前のことを当たり前に言っているだけですね(´・ω・`)

 

これでは社会にインパクトがあるわけはなく、文字通り単なる理念法止まりな法律となっていました。

 

障害者権利条約では、従来の医療モデル(=障害はその人に起因するという考え方)から、社会モデル(=社会が障害、社会的障壁を作っているという考え方)への転換を明確にうたっています。そのため、障害者基本法でもこれを盛り込む必要がありました。

 

改正で障害者権利条約の理念が反映されることで、各論的な他の法律を改正する準備が整ったことになります。

 

【改正後の障害者基本法】

(差別の禁止)
第四条 何人も、障害者に対して、障害を理由として、差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない。
2 社会的障壁の除去は、それを必要としている障害者が現に存し、かつ、その実施に伴う負担が過重でないときは、それを怠ることによつて
前項の規定に違反することとならないよう、その実施について必要かつ合理的な配慮がされなければならない。
3 国は、第一項の規定に違反する行為の防止に関する啓発及び知識の普及を図るため、当該行為の防止を図るために必要となる情報の収集、
整理及び提供を行うものとする。

 

3 障害者総合支援法の制定(2012年)

続いては、障害者総合支援法の制定です。

 

『制定』と書きましたが、この法律は新しい法令というわけではなく、前身があり、『障害者自立支援法』という法令がバージョンアップしたものになります。

 

この法令の解説だけで60分の講演ができてしまうほどです(笑)

 

2つの法律を対比させて見てみましょう。

名称 障害者自立支援法 障害者総合支援法
目的 障害者が自立した生活を営むことができるよう、
必要な福祉サービス等の支援を行う。
障害者が基本的人権を持つ個人としての尊厳にふさわしい日常生活が営めるよう、
必要な福祉サービスやその他の支援を総合的に行い、社会的障壁を除去すること。
障害者の範囲 身体、知的、精神 身体、知的、精神、難病患者
障害の程度を示すもの 障害程度区分 障害支援区分

 

旧障害者自立支援法は、障害者は弱い者(=社会的弱者)ですよ、だから皆さん助けてあげましょうね。このような考え方が元の法律となっています。

 

それに対して障害者総合支援法は、障害者も1人の人間なんだ、社会に参加して当然なんだ、そのためにある社会的な障壁を取り除こう、そのために必要な支援をしよう、といったように、改正された障害者基本法の理念をしっかりと取り込んだ内容になっています。

 

こうして、障害者を取り巻く法令の整備が進み、あとは障害者差別に関する法令を制定することを残すのみとなりました。 

(参考URL:厚生労働省HP)

https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/sougoushien/dl/sougoushien-06.pdf

4 障害者差別解消法の制定(2013年)

上記の法改正をうけ、条約の批准に向けた総仕上げとして、障害者差別解消法が制定、施行されました。

 

ここまでが、障害者差別解消法制定の経緯になります。

 

法律の制定1つとっても、様々な経緯があり、単に障害者の差別をなくすための法律というわけではありません。

 

自立支援から社会参加へ、理念の変遷を反映したものが、この障害者差別解消法になります。

  障害者差別解消法の概要 

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障害者差別解消法では、2つのキーワードがあります。このキーワードを覚えて今日は帰ってください(笑)

 

それは、「不当な差別的取扱いの禁止」「合理的配慮」です。

 

なんだか難しそうな表現ですね。

 

障害者差別解消法では、この「不当な差別的取扱いの禁止」をしてはならず、「合理的配慮」をしなければいけない、とされています。

 

それぞれ、詳しく見て行きましょう。

 

不当な差別的取扱いの禁止

不当な差別的取扱いの禁止は、法的義務です。

 

繰り返しますが、法的義務です。

 

障害者に対して、差別的取扱いをすることは、法令違反なのです。

 

どのような事例が、不当な差別的取扱いなのかというと、

  1. 「障害がある」ことを理由に、スポーツクラブへの入会を断られた。
  2. 「車いす利用者」であることを理由に、飲食店の入店を断られた。
  3. 「聴覚障害」を理由に、サービス提供の場で手話通訳者の同行を義務化する。(1対1で話そうとしない)

このようなことがあげられます。

 

いずれも、よくある話のように見えます。しかしながら、これらの事案がすべて一律に差別的行為に該当するというわけではありません。あくまでも、差別的取り扱いについては個別判断となります。

 

例えば、わかりやすい事例でいうと「2」の場合。

経営しているのは老夫婦のみ、店舗は2階でエレベーターはなし。店舗は賑わい、老夫婦は通常営業で手一杯な状況。

このような環境で、車いす利用者を2階席まで上げられますか?

 

到底、無理ですよね。このような場合のように、過度な負担となる場合は、不当な差別的取扱いにあたりません。

 

障害者差別解消法が、槍玉に挙げられる時は、権利を前面に出され、配慮を主張されることを事業者が危惧しているからだと思います。

 

しかし不当な差別的取扱いん判断基準は、あくまで個別判断です。過度な負担だと判断すれば、断っていいんです。丁寧な言葉で説明して、理解してもらえなければしょうがありません。その場合は、その方が悪いのですから。あなたは悪くありません。

合理的配慮の提供

つづいて、合理的配慮の提供です。

 

こちらは、不当な差別的取り扱い の禁止とは異なり、努力義務になります。

 といっても、守らなければいけないという趣旨は変わりませんよ!

 

具体例を見て行きましょう。(逆に、これらのことをしないことが、不当な差別的取扱いです!

  1. 聴覚障害のある人がいる人に対して、筆談や手話通訳を呼び、サービス提供の機会を設ける。
  2. 視覚障害者が参加する会議では、事前に資料の音声データを渡す。
  3. 車いすのお客さんに対して、棚の上の商品を取ってあげる、説明して見せてあげる。

 

いかがでしょうか。合理的配慮というと難しく聞こえますが、要は簡単な一手間の工夫、心遣いなんですよね。

 

ちなみにですが、県庁時代の頃は、「2」の作業は骨が折れました。何が大変かって、グラフや表を音声で説明しなければいけないんですよ。先輩と相談しながら夜中まで作業したのは、今では良き思い出です(笑)。

 

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まとめ

記事を読む前と後で、障害福祉に対する考えは変わりましたでしょうか。

 

障害というものは障害のある方に起因する『医療モデル』ではなく、社会にあると考える『社会モデル』であること、社会を変えて差別を無くそうという理念を具体化したものが障害者差別解消法であると、理解していただければ幸いです。

 

  • 障害者権利条約では、障害とは社会の構造が作るものであると再定義し、社会的障壁を無くすために各種法令の整備が行われた。
  • 『医療モデル』から『社会モデル』への転換。
  • 不当な差別的取扱いは禁止され、合理的な配慮を行わなければならない。ただし個別具体に勘案し、事業者に過度な負担を強いることになる場合は、差別的取扱いとはならない。

 

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